東京農大・公開特別講座(04年6月2日)
企業と環境
国際NPOナチュラル・ステップ代表 高見幸子
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講師の高見幸子さんはスウェーデンのストックホルムに25年住み、現在も日本とスウェーデン両国を行き来している人。
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ナチュラル・ステップは15年前にスウェーデンの小児癌専門医のヘンリク・ロベール博士が設立、世界11カ国で活動している環境保護団体。メンバー約15万人。(グリーピース、自然保護協会と同クラス)
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ヘンリク・ロベール博士は環境分野のノーベル賞といわれているブルー・プラネット賞を設立した人。
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環境問題を長期的、総合的、目的的、科学的、論理的に考えていこうとしていて、地球を持続可能な社会とするには次の4つの原則を守ることが必要であるとしている。
@地殻から掘り出した物質の濃度が増えつづけないこと。
A人間の作り出した物質の濃度が増えつづけないこと。
B自然を劣化させないこと。
C人間の基本的ニーズを妨げる状況を作らないこと。
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ヨーロッパでは70年代に環境問題に目覚めた。(当時、日本は高度成長真っ盛り、公害問題は二の次)90年代では、企業が環境責任をとるのが常識となった。2000年代に入ってグローバルな視点、持続可能性の追求がテーマになっている。
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日本は、環境改善の技術は進んでいるが、環境改善の意識、価値観が極めて低い。企業のコスト優先、環境後回し、一般庶民のゴミ捨てなど。環境政策も貧困。(政治家が環境問題では蓄財できないと思っているから)
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地球規模で見た時、耕地、森林、水産物は減少し、気候変動は激しくなり、汚染は増加している。一方、人口は増加するので未来は先細り状態。(漏斗現象)
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したがって前述の4つの原則を真剣に考えていかないといけない。
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自分は25年もスウェーデン・ストックホルムに住んでいるのでストックホルムの現状を少し話す。
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スウェーデンでは、宅地開発のために森林を伐採してはいけない。宅地開発は工場跡地に行なう。
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10年前からアルコール燃料(小麦、ワインなど)が実用化され、最近はさらにバイオガス(生ゴミ、家畜の糞、下水処理場からの)も用いられている。(ボルボ、サーブなどの乗用車に)
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京都議定書は全て既にクリアしている。
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市庁舎前の湖は50年前は汚れていて水泳禁止だった。しかし今はすくって飲めるほどきれい。
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スウェーデンは先進国で唯一BSEが発生していない国。それは20年前の85年から肉骨粉の使用を禁止していたから。
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91年には炭素税を導入、石油燃料を使うと割高になるようにした。
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ペットボトル、アルミ缶の回収率は98%、理由は回収箱に入れると60円戻ってくるから。
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洗剤はすべて環境配慮の製品になっている。(そうしないと売れないから)
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煙草の価格はものすごく高い。(約800円) 法律で「煙草を吸うと死ぬ」と書かせている。そのため喫煙率は20%。
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スウェーデンでは、市民の環境改善の意識が高く、市民が政府や企業に圧力をかけ、環境改善の法律や規則を作らせるからどんどん良くなっていく。
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政府も企業も市民からの攻撃に戦々恐々としている。
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市民がうるさいのはなにも「地球環境を守るため」とか「環境に優しい社会を作ろう」と言った謳い文句(たてまえ)ではなく、自分達が快適な生活をおくる為に良い環境が大切であると考えていて、その邪魔をするものをなくそうと考えているから。
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日本も環境技術よりも考え方を大切にし、市民が動かなければ駄目。政府や企業は金にならないこと、やりたくないことは後回しにする。
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前述したように、スウェーデンでの環境改善の実例は山ほどある。日本でもやろうと思えば出来るはず。
以上